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大事な人が今すぐソコで、亜也斗の手によって傷付けられている。
そう思うと涙が止まらなかった。
「やめて…よぉ、朔夜さんを…グス、傷付けないでぇ……お願…ぃ……」
まだ自分に向けられる痛みなら我慢できる。
でも大切な人が傷付けられるのがこんなにも辛く、耐え難いものだとは思いもしなかった。
これも外へ出て初めて知った痛みだ。
こんな事なら私なんかが外に出なきゃよかったんだと深く後悔する。
「………チィ、大丈夫だっ……俺は大丈夫…だから、ソコで大人しく…ジッとしてろっ」
「でも…でもっ、朔夜…さっ……痛い……痛いよぉ?ここ…開けてい……い……?」
絶え間なく続く拷問のような暴行の音は私には堪えられない。
朔夜さんは懸命に呻き声を抑えてくれていたけど、少しずつ這い擦りながら扉の前に近づけば耳へと届く。
我慢できなくなった私はドアに縋りつき、開けても良いか朔夜さんに乞う。
だけどその願いは聞き入れて貰えなかった。
「ダメに…決まってるだろっ、俺が皆に叱られるっ……グッ、…がはぁっ!? 」
「弱い癖に意気がるなって♪せっかくおチビちゃんが出てくるって言ってるのに、ねぇ?」
私が出る事を阻止する朔夜さんに、亜也斗が容赦なく制裁を加える。
堪らずドアノブに手を伸ばせば、また彼は声を振り絞って止めた。
「チィッ!ダメだって言っただろっ!! もう直ぐこの事態に気づいて和之たちが来る。それまでは…堪えるんだっ」
意識が朦朧としながらも朔夜さんが懸命に私に思い止まるよう言う。
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