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でも、その脚は床に蹲る朔夜さんの手によって止められる。
血に濡れた震える手が足首を掴み、懸命に私が行くのを阻止しようとしてくれた。
………涙が、止めどなく溢れる。
「ダメだよ、朔夜さん…離して?私、もう行かなくちゃ……」
思わず縋ってしまいそうになるのを必死に思い留め、頭をフルフルと振って彼を拒む。
けれど朔夜さんはボロボロに傷付きながらも、そんな力がどこにあるのかと思えるほど強くその掴んだ手を離さない。
「行かせないっ、絶対…にっ――がはぁっ!?」
「いやあああぁっ!?ヤメてっ、ヤメてよぉッ!! 」
朔夜さんの腹部を狙って亜也斗が透かさず蹴りを入れる。
咄嗟に私はしゃがみ込んで彼の身体に覆い被さり、これ以上の暴行を阻んだ。
が、その行為が逆に彼の怒りを買い、暫く私もろとも朔夜さんは蹴りの応酬に合った。
「クズどもがっ!俺に逆らうなんて百万年早いんだよッ!! お前らは一生床に這いずってればいいんだっつーのッ!!」
蔑みながら蹴りあげる威力は凄まじかった。
私は許して貰おうと懸命に彼に謝る。ごめんなさい、ごめんなさいと何度も何度も……。
それでも亜也斗は許してくれなかった。
朔夜さんが最後の力を振り絞って私を庇ってくれるから……。
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