交差する想い

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. そして片方の足を地に着けたままエンジンを吹かし、前後のタイヤを滑らせ方向転換させた。 「――和之ッ!! 後ろ乗るかっ?」 バイクの騒音の為に声を張り上げて問う。 すると奴はメットを脱ぎながら肩を竦め、首を横に振って苦笑いを溢す。 「遠慮しておくよ、俺が乗ればその分総重量が重くなる。早く行ってやってくれ」 そう言うと右手を挙げ、さっさと行けと言わんばかりにシッシというジェスチャーをする。 それから思い出したように懐から自分のケータイを取り出し、俺に投げて寄越した。 「とりあえず、此処を出たら大地に連絡を入れろ!粗方の説明はしてくれるッ!!」 「わかったッ!!………本当に行かないのか?」 何故残るのかが不思議で再度問えば、和之は少し困ったように微笑みまた首を振る。 窮屈なライダースーツの襟元を緩慢な動作で寛げ、ファスナーを一気に腰の辺りまで下げた。 「誰かが残って馬鹿な親父殿にお灸を据えてやらないと♪だろ?」 「あぁ、なるほど……。なら、後は任せる」 互いにフッと笑い合うと俺は片手を挙げ、後は振り返らずにブレーキを握ったままエンジンを吹かす。 助走が短い分、出力を上げておかなければならない。 ぐるりと辺りを見渡してジャンプ台になりそうな物を瞬時に探し当てた。 ―――イケるッ!! そう確信した俺は溜まった出力を一気に開放すると、庭先にある大きな灯籠目掛けてハンドルを切る。 .
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