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通常の物よりも遥かにデカイそれは崩れつつもバイクの重みに耐え、車体を宙に舞い上がらせた。
しかし距離が足りずその勢いのまま後輪を外壁の上の瓦に乗せ、前輪を高く上げた状態でなんとか乗り越える。
外の車道へと飛び出したバイクは着地と同時にアスファルトの上を横滑りし、派手なスリップ音を鳴らしながらも暫くして漸く止まった。
無事に脱出できたと思う暇もなく表玄関から直ぐさま放たれた追っ手が、こちらに駆け寄って来ているのが遠くの方に見える。
肩を竦め深い溜息を吐いた俺は、もう一度タイヤをスリップさせて車体を方向転換させ、そのまま夜の住宅街を抜けて走り去った。
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「――白銀さんッ!! ご無事でなによりです!!」
鷲塚の家を抜け出し追っ手もどうにか撒いた俺は、和之に言われた通り直ぐさま大地と連絡を取った。
人通りの少ない港を待ち合わせに指定して奴と合流する。そこで俺は事のあらましを知った。
「…………やってくれたな、吉良」
腹わたが煮えくり返りそうだが、今ここで大地を相手に怒りをぶつけても仕方がない。
ヤるなら直接本人に“お礼”をさせて貰わなければ気が済まなかった。
それに奴は所詮は駒……。愛音にはいずれ大きなお灸を据えなければならないだろう。
「…………で、今の状況は?」
内の中で燻る怒りをなんとか鎮め、今のチームの状態を大地に尋ねる。
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