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《健吾side》
――いったい何がどうなってやがる……!?
深夜に叩き起こされて白鷲の溜まり場に来てみれば、大量の怪我人と何者かに襲撃された形跡が其処彼処にあった。
只ならぬ雰囲気にある程度の事態は把握したものの、肝心のチィの姿が見えなくて俺の不安を否応なく掻き立てる。
とりあえずと一番の重傷者がいるという場所まで案内されたが、そこには満身創痍でソファーに横たわる朔夜の姿があった。
それを目にして俺は漸くすべてを理解する。
チィは攫われたのだと……。
「――何やってんだよ!煌騎はッ!? ナイトさまはどうしたよっ!?」
相手が怪我人だという事も忘れ、俺は朔夜の胸ぐらを乱暴に引っ掴んで前後に揺すった。
慌てて周りの連中が止めに入ったがそれでも止めずに奴を揺すり続ける。
すると朔夜は俺の腕を掴むと一瞬だけキッと睨み、それから顔を背けて心底悔しそうに顔を顰め力なく俯いた。
「すま…な…い、俺がもっと…しっかりしていれ…ば……こんな事にはっ」
「っ!?………………すまん、俺も取り乱した」
気持ちを落ち着け労るように肩をポンポンと叩けば、朔夜は傷に響くのか更に顔を顰めるので不謹慎だが俺は笑ってしまう。
当然奴には怪訝な顔をされたが、素知らぬ顔を決め込む事にする。
「とにかく今はお前の治療が最優先だな!」
「――俺なんかの治療より早くチィの救出に向かわなければッ!?」
「あ゙ぁ゙ん?テメェは黙ってろッ!! 治療が必要かどうかは医者の俺が決める!!」
無理に動こうとする朔夜を制し、半ば強制的にソファーへとまたその傷だらけの身体を横たわらせた。
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