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「――おい!朔夜が怪我したって本当かッ!?」
とりあえず外傷の応急措置を済ませ、臓器損傷の疑いがあるこいつを病院に搬送させるべく段取りを取ろうとしているところへ、連絡を受けた虎汰がやってくる。
ったく、うるっせぇ奴が来やがった……。
俺は眉間に皺を深く刻んで振り返り、ドタドタ無遠慮に室内へ入ってきた虎汰を睨み付ける。
「うるせぇよッ!! 傷に障るから静かにしろっ!!」
「あ、健吾さん居たんだッ!! 良かった……」
虎汰の奴は俺の顔を見るなりホッと息を吐く。
が、いつでも何処でも騒がしいこいつがじっとしていられる筈もなく、朔夜が身を沈めるソファーに駆け寄るとその横へ陣取ってしまった。
邪魔な事この上ないので俺は透かさず奴の肩に蹴りを入れる。
「邪魔だっつーのッ!! 向こうへ行ってろ!!」
奴は暫くブーブーと文句を垂れていたが、本気で邪魔だと悟ったのかスゴスゴと部屋の隅へと移動した。
しかし朔夜の容態が気になるようで、時折チラチラとこちらの様子を窺っている。
「ハァ……する事ねーんなら不在中の煌騎や和之の替わりに陣頭指揮でもしやがれってんだッ!!」
トップ二人が揃って不在の為に今やチーム全体の指揮系統は乱れ、混沌の坩堝と化していた。
それを迅速に纏め上げ、混乱を鎮めなければならない。だがそれが出来るのは今、虎汰を措いて他にいなかった。
「しっかりしろ!今チームの存続がお前に掛かってんだぞッ!!」
もしこの期に乗じて他のチームからも襲撃を受ければ、8代続いた白鷲も文字通り終わる。
気を引き締める為に俺は敢えて虎汰に発破を掛けてやった。
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