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不破の一族は由緒正しい法律一家だ。
祖父もそれなりの権力者だが、母親も国際弁護士で世界中を忙しく飛び回っていると聞く。
そして娘婿で和之の父親、正儀(マサノリ)も地方で単身、裁判官を勤めているらしかった。
裏の家業を生業とするウチにとって、最も関わり合いたくない人種の一族と言っていい……。
でも今夜はその一家が奇跡的に揃うという情報を、吉良経由で事前に手に入れていた。
絶好の好機だと捉えた私は、この日にある計画を実行する事にしたのだけれど……。
あの用意周到な男はそれを逆手に取り、煌騎奪還に上手く利用した。
普段は疎遠の仲だと聞いていたのに彼の策略にまんまと嵌まった不破一族は、お祖父様を一家の脅威と見なし持てる権力を駆使して今後の動きを一切抑制してしまったのだ。
そのお陰で私は当分の間、お祖父様の権力が使えなくなったのは言うまでもない。
肝心の煌騎には逃げられてしまうし、もう踏んだり蹴ったりだ。
「これで吉良が失敗なんかしてたら許さないんだからッ!!」
「フッ………お嬢は本当に自分の事しか考えないんだな」
呆れ返るように神埼は鼻で笑うが、これは生まれ持った私の性格だ。
本当に欲しいものを欲しいと言えず、今まではずっと我慢を強いられていたんだもの。少しの我が儘を言ってもバチは当たらないと思うの。
そう思うのは私だけ?
誰だって権力を手に入れたのなら、使ってみたくなるのが人の性というものでしょ……?
私はもう我慢なんかしない!
何としても『彼』を手に入れてみせる。
その為にも先ずはあの目障りな女を始末しなければ……。
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