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諦めることにはもう子どもの頃からずいぶんと慣れている。
何をやっても望んだものは何一つ手に入らなかったからだ。
いつしか望むことすらも諦め、1日が無難に過ぎるのを祈るようになっていた。
「………チィ、だからって諦めるの?」
まるで私の胸中を読んだように虎子ちゃんが顔を覗き込んできた。
でも私は彼女を正面から見れない。
自分の顔を隠すように反らし、真意を悟られないようにする。
「あ…諦めるって、何を……?」
「誤魔化したってダメ!チィは煌騎くんのことが好きなんでしょ?」
「―――煌騎を…す、好きっ!? 」
知らないはずの感情を指摘され、私は大きく驚いて動揺した。
先ほどからズキズキと胸が痛むのはもしかしたらその所為……?
これが“好き”という気持ちなのだろうか……?
どれも経験したことのないものばかりで戸惑ってしまう。
だけど私は素直にそれを認められなかった。
「そ、そんなはずないよ。だって煌騎とは今朝、知り合ったばかりなんだよっ!? 」
首を横にブンブンと振り、虎子ちゃんの言葉を強く否定する。
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