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組の中には俺の父親が跡目を殺したのではと疑いの目を向ける者もいたが、鷲塚の親父が一喝してその疑惑は鎮まった。
親父は以前から俺の父親を組に迎え入れたいとほざくほど気に入り、誰よりも信頼を置いていたからだ。
だが1度は鎮まった疑いの念は今でも組内で根強く息衝く。
そして父親が誰にも理由を告げず姿を晦まし、母親も2年前に離婚して既にこの地を離れていたのか連絡が取れなかった為、親父は仕方なく俺を引き取った。
それが跡目の遺言でもあったからだ。
生前、俺の父親と自分たちの子供を結婚させようと話していたらしい。
跡目には俺より1つ下の娘がいた。
あの場にもいたが騒ぎに紛れ何者かに誘拐されていたと、随分と経ってから聞いた。
ひと月後、組員の手によって無事に救出されたのだそうだ。
が、次に顔を合わせた時には別人のようになっていた。
外見はまったく変わりないのに、何故かコイツは俺の知ってる奴じゃないと感じたのだ。
だが所詮ガキの戯れ言と誰も耳を貸さなかった。
両親の死と誘拐された時のショックで、人格が変わってしまったのだろうと言って……。
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