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腐っても鷲塚組の組長、さすが勘の鋭さは年を取っても衰えないとみえる。
だが隣には愛音がいた。
話を聞かれるワケにはいかない。
仕方なく俺は当初の目的である要点だけを話すことにした。
「ある拾い物をした。裏にデカイ組織が絡んでいるようだが親父には当分、目を瞑っていて欲しい」
「………ほう、自分で片付ける気か。いいだろう、好きにするといい」
「―――え、いいのか?」
思いの外あっさりと承諾を得て拍子抜けしていると、親父が意地の悪い笑みを浮かべる。
マズイと思った時には遅かった。
親父は嬉々として俺をからかい始める。
「なんだ、反対して欲しかったのか?なら初めからそう言えば良いものを……」
「―――い、いや、大丈夫だ。根回しも粗方済んでいるし、今回は終盤まで親父の出番もないだろう」
「そうか?つまらんのう……」
心底残念がるクソ親父を何とか説き伏せ、自由に動く許可も得て俺は油断していた。
親父の横で話を静かに聞いていた愛音が行き成り口を挟む。
「ねぇ、煌騎さん?その“拾い物”って何かしら?私、そちらの方が凄く興味が湧いちゃった♪」
甘えたような猫なで声で話し掛けてはくるが、目は笑っていない。
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