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今の時刻は22:17―――…。
俺は溜まり場の倉庫にほど近い喫茶店を目指していた。
あれから親父に酒を浴びるほど飲まされ、帰る間際もしつこく屋敷に戻って飲み直そうと誘われたが、やることがあると断って逃げてきた所だ。
目を盗んで休憩を入れたりしていたのでほぼ素面に近いが、さすがにバイクの運転は無理と判断して店に置いてきた。
今は徒歩で移動中だ。
「明日はバイク取りに行かないと……ハァッ、面倒くせぇ。下の奴らに取りに行かせるか……」
が、そこまで考えて項垂れる。
俺のバイクは流星のよりデカいし重い。
そんなバイクを誰が乗って帰れるというのだ……。
おそらくあれを乗り回せるのは俺以外で和之くらいのものだろう。
自業自得だが段々と腹が立ってくる。
だがちょうど怒りがピークに差し掛かる手前で、前方に洋風の洒落た店が見えてきた。
中ではチィが満面の笑顔で虎汰のおばさんとおじさん、優子さんと虎治さんが作る飯を美味そうに食ってるんだろうなと思い描く。
それだけで自然と怒りも鎮まった。
急に足取りが軽くなった俺は、ニヤつく顔を掌で覆いながらチィの待つ喫茶店へと急いだ。
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