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気持ちも心もあの頃の私じゃない。 「そんな訳ないじゃない」 同期は肩を竦める。私は少しムキになり過ぎた。焼きたてパンが入ったバスケットを抱える店員が私達の席に来る。パンは数種類あって店員はどのパンがいいか私に尋ねた。どれでもいい、と答えると、同期は、真梨夏はバジルのパンでしょ?、と店員に促す。 「真梨夏は欲しいものを欲しいって言わないよね」 「そう? 別にこだわりが無いだけよ」 「ふうん。じゃ、バジルのパン食べちゃおっかな~」 「あっ」 同期は、冗談、と笑ってパンを私の取り皿に戻した。
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