2/11
前へ
/36ページ
次へ
そのままデッキに佇んでいるとボンボンはやって来た。涼みたくてデッキにいたと言い訳をしながら空いていたベンチに腰掛ける。バーラウンジの窓から真っ正面に見える場所……私はわざとそこを選んだ。 そして隣に腰掛けたボンボンに寄り添うと自分からボンボンの顔を覗き込み、キスをせがむ。ボンボンはニッコリと笑ってキスに応じた。私はボンボンと唇を重ねながらバーラウンジの窓を横目に見遣り、センセイを探した。 やがて船は埠頭に戻り、皆が下船する。ボンボンは私の腰を抱きながら歩き、タクシーを探した。正直なところ不本意だった。だってこの男は私を恋人にするつもりが無いと感じていたから。タクシーが捕まったらボンボンだけを乗せたところで外からドアを閉めてやろうと思ったのに。 ……背後から漂う匂いに私は衝動的に反応した。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加