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『おやめなさい、品が落ちます』 ……落としたんじゃない、たまたま今夜の男がはずれただけ。大体取っ替え引っ替え相手を変えるセンセイに品位を定める資格など無い。自宅に着き浴室に飛び込み服を脱ぎ捨てる。 シャワーのレバーを全開にして洗い流す。着飾った自分を笑われた、ボンボンにもセンセイにも……。濡れた手でクレンジングを取り、化粧を落とす。頬、瞼、鼻、唇。唇をなぞる自分の指にセンセイの指先を思い出した。 『あなたにはピンクのグロスがお似合いですよ?』 「……」 今更ピンクのグロスを塗ってどうなる……。センセイは私を数回抱いただけで私を捨てたのだ。センセイは私みたいた雑種じゃなくて、血統書付きの製薬会社の女性みたいな女が好みなのだ。雑種がグロスを塗っても雑種でしかない。
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