お話.2

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声のした方を見ると、芦田君と思いっきり目が合った。 芦田君に話しかけられるなんて、初めて。 わ… 初めて目が合ったかも…。 いつも挨拶する時は、目も合わせてくれないから。 慣れない視線に、少しドキドキしながら かろうじて返事をする。 「な…何?」 「担任が呼んでたよ」 「え?本当?…ありがとう」 「ん」 芦田君はそれだけ言うと、踵を返して行ってしまった。 正面から見る芦田君は格好良くて、少しドキドキした。 まるで芸能人と喋ったみたいに。 現実味のないフワフワした気持ちのあたしに、あゆが不思議そうに顔を覗かせた。 「雪香?何だって?」 「あ!なんか担任が呼んでるって」 「えーすぐ終わるの?予定ありますって言って早々に切り上げておいで」 「んーとりあえず行ってくる」 職員室まで廊下を小走りする。 なんか用事ができて残念なような、ほっとしたような。 あたしやっぱり乗り気じゃ無かったのかなと、自分で呆れた。
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