8人が本棚に入れています
本棚に追加
いよいよ盆が来た。
それを歌ったのが二番である。
子守奉公の少女は、みすぼらしい作業着しか持っていない。盆が来たからって、着飾れない。村中が晴れ着を着飾るなか、普段の野良着を纏っている自分は、まるで勧進(乞食)みたいだ。
でもこの盆が最後だ。ああ早く、おとっ様よ迎えに来てくれ。
盆が来ても着飾れない少女の哀しみは、全国共通らしく、たとえば、竹田の子守歌のヒロインは
盆が来たとて
何うれしかろ
帷子はなし
帯はなし
と歌っている。
やや長じた少女になると、着飾れないんじゃなくて、あえて着飾らないんだと、精一杯の意地を張る。
同じく、竹田の子守歌では
来いよ来いよと
小間物売りが
くれば見もするし
買いもする
と歌う。
少女の気を引く、きれいな小間物(簪や髪飾りなど)を売る小間物売りは、盆は書き入れ時である。
いつの時代も、商売人は、銭について人につかない。
銭持ってるはずがない子守奉公の少女は、無視して、「良か衆」のお嬢さんの機嫌を取る。
私の所へも来たら、手に取って見た上、ひとつかふたつ、買ってやらんでもないのに、スルーしやがって!
私が小間物を持たないのは、小間物売りがスルーしやがったからだ。
精一杯の抵抗である。
営業がかかっても買えるわけがない。
彼女の生活環境は、錦綾の子守歌に歌われたごとく
盆が来たなら
麦に米混ぜて
しかも茄子の醤油炊きで
といったレベルなのである。
米に麦混ぜて
でなく、
麦に米混ぜて
であることに注目して欲しい。
普段は、麦100%の麦飯なのである。お盆にだけ食べられる、ご馳走が、茄子の醤油炊きなのである。
醤油以外には何の調味料も使わない煮物がご馳走なのである。
砂糖味醂なんて、知りもしないのである。
最初のコメントを投稿しよう!