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すると席を探す様子も無く、真っ直ぐに歩いてきた。私の隣にマグを置く。
「歩道からお姿が見えたので」
鞄と書店の紙袋を向こう側の座席に乗せると断りも無くスツールに座る。センセイから空気が寄せてきてオリエンタルな香りは否応なしに私の鼻を突く。勝手に座るな、と言えばいいのに口が動かない。
金縛りだ。金縛りにあっている。体内の液体が一滴残らず凝固して私は生き物では無くなったと錯覚を起こした。
「お元気そうですね、真梨夏さん」
「……」
麻酔……? この香りは麻酔。金縛りなんかじゃない。私に取っては麻酔。
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