第4話【無料】

１１

その麻酔が働いたままの頭で考えを巡らす。センセイは何故ここにいるのか、何故私の隣に座るのか。

センセイはコーヒーを一口飲むとマグをカウンターに置き、私に向き直る。何も喋らない私を不思議に思うのか、首を傾げるように私の顔を覗き込む。

「……ええ」

力の入らない体で声を振り絞り、返事をした。お元気そうで、の言葉に違和感を覚える。ディナークルーズでばったり会った時にも同じ台詞を言われたからだ。そう間は空いていないのに。

「元気というのはその意味ではありませんよ」

センセイは鼻で笑う。