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「まだあちらにお勤めですか?」 「ええ……一応」 「一応?」 「大学に戻りましたので。蓮田先生の医院は非常勤になります」 大学。だから最近会うのかもしれない。確かセンセイの出身校はこの近くだったと思う。 「また約束を破って診療にお越しになるおつもりでしたか?」 「いえ。最近良くお会いするので」 「そうですね」 センセイは再び専門書に視線を戻した。私も手持ち無沙汰で携帯を見る。 「携帯も便利ですが本もお読みなさい。紙の本も良いものですよ」 センセイは細く白い指先でページをめくる。香水に混じり、新書独特の匂いが漂って来た。
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