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「僕が痛くするの、分かってて呼んだんでしょ」 「愛人になるなんて一言も言ってないわよっ」 私もあの頃は擦れてなかった。学業もそこそこ優秀で親の手も教師の手も煩わすことはなかった。優秀というのはつまり、挫折を知らないコドモ。回りに比べ、精神的に幼かったと今になって思う。 ……学校の近くとあってあの歯科医院に通院したことのある学生も数人いた。男と言えば、辺りは汗塗れの日焼けしたサッカー小僧や野球坊主、大人と言えば腹の出た脂ぎる父親や中年教師ばかり。 切れ長で白い肌の大人の男は女子高生には珍しい存在で、一部では有名な歯科医師だとは後で知った。
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