12

4/10
前へ
/38ページ
次へ
私とて恋ぐらいはしていた。クラスの子や部活の先輩、淡くほのかに思いを寄せていた男の子はいた。数ヶ月なら付き合った経験もある。そんなママゴトみたいな恋愛で級友達と盛り上がる。デートに誘われた、手を繋いだ、キスをした、とはしゃいでいた。 でもセンセイは違った。帽子とマスクの隙間にある切れ長の鋭い瞳に私は目を逸らせなかった。否応なしに鼻を突く初めての香水に私は更に動けなくなった。診察台に鎖で括り付けられたかのようだった。会った瞬間に私はおかしくなかった。どうしようもなく引き付けられて身動きが取れなくなったのだ。恋という明るく希望のある響きとは違う、全く異質の何か……。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

635人が本棚に入れています
本棚に追加