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人を外見で判断してはいけない、とか、努力は報われる、とか、それが嘘だとは知らずにいた。親や学校に大きな保護膜を与えられていたことにも気付かず、保護膜の中でそれが普遍の真理だと信じていた。 私が指で唇を拭われたと話すと級友達は興奮した。あたかも自分が大人の、しかも親や教師や回りのコドモっぽい学生とは異人種のセンセイに触れられたと妄想して舞い上がる。私も高揚した、実際に触れられたのは自分で、その感触を覚えていたのだから……あの匂いと目付きと共に。級友は囃し立てた、そんなことするのは私に興味があるからだと、告白すべきだと唆した。 私はその気になった。挫折を知らなかったからだ。頑張れば何でも手に入る、外見や素質など生れつきのものは評価に響かない、そう教えられてきたコドモには怖いものなど無かったのだ。
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