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「済まん。山に来るとは言わなかったから寒いだろう。小川は朝飯はまだか?」
「はい」
「お握り食べるか? 握ってきたんだが」
「睡眠薬、入ってます?」
「こらこら」
ベンチに座り、部長がバッグからインスタントのカップ味噌汁を取り出し水筒の湯を注ぐ。部長の握った大きなお握りをもらう。
「ほら。部下の心は胃袋で掴め、と言うだろう」
「違う気がしますけど」
「細かいことは気にしなくていい」
かじかみ始めた指先で味噌汁のカップを持つ。湖には紅葉した木々が映り込む。
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