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――――数日後。
取締役会の前日。
私たち秘書課はその準備に追われていた。
やはり一番大変そうなのは室長だったけれど、人数が少ない分チームワークではどの部署にも負けていないと思う私たちは、お互いのフォローをスムーズに行えていたと思う。
会場の準備も、資料や飲料水などの準備物も全て調えた。
明日の取締役会で承認決議されれば、渉さんは正式に社長になる。
私はどんな気持ちでその瞬間を迎えるんだろうか。
…嬉しい…んだろうか。
想像がつかなかった。
せめて、明日は早く上がって病院に顔を出したかった。
…報告…のために?
…私には……
もっと別の意味があるような気がしていた。
私は明日のことを考えながら、社長室の渉さんにコーヒーをお持ちする。
ノックをする前にお盆の上のコーヒーを見つめる。
遠野社長のコーヒーは砂糖とミルク入り。このコーヒーと見た目も香りも変わらない。
以前は社長にお出しする度に
『…甘そうな香りだな…。』
って、自然に笑いが込み上げた。
けれど、今手にしているミルク入りのコーヒーは
とってもいい香りなのに
私の中には少しも広がってこなかった。
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