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◆◆ side 望愛 ◆◆
それからの毎日、私と渉さんは何の変化もなく、私は与えられた仕事をただ淡々とこなしていた。
同じ秘書室の理央と奈美にはたまに顔を出してくれる副社長と常務の笑顔が向けられ、その度に…うらやましいと思っていた。
以前は、…私もそうだったのに。
私はいつだって黙って通り過ぎる渉さんの背中だけを見送っていた。
そして、その週。
予定して株主総会が開かれ、手続きも終わり、渉さんは名実ともに社長となった。
就任パーティーの準備も着々と進み、いよいよ今週末に迫っていた。
そして、パーティー前日。
この日は渉さんと室長と一緒にパーティー会場に最後の確認に出掛ける予定になっていた。
担当秘書が外出というのは珍しいこと。
私と理央、奈美、この三人に外出はほとんどない。
役員の外出に付き添いが必要な場合はほとんど室長が同行することになっていた。
この、例外的な三人での外出に
私をさらに不安にさせる出来事が待っていようとは…
…思いもしなかった―――。
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