爪痕(ツメアト)-1

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次の瞬間、氷よりも冷たい視線が突き刺さる。 「明日のお前の準備だ。ふざけてるのか?」 「…ですから、明日の何の準備でしょうか? 言われたことは全て準備したつもりですが。」 「…お前、わかってるのか?明日はお前もパーティーに出るんだぞ?」 …え? …嘘。 …そんなの聞いてない。 「ど、どうして私が出るんですか? そんなお話、聞いてません!」   「お前はバカか? 社長の就任披露に秘書のお前が出ないなんてことがあるのか? お前……俺の秘書だという自覚がないのか?」 刺すような視線に重ねて、冷たい言葉を投げつけられる。 「パーティーには室長が付き添いをされるんじゃないんですか!?」 そう、このような役員の社外行事には室長が同行するのが常だった。 私たちはほとんど経験がない。 …今回だって、そうだと思っていたし、渉さんからも室長からも私が出席するなんて聞いてなかった。 「…社長、それは私も聞いていませんでした。桐谷君には経験もありませんし、私が出席します。」 室長が私の代わりに渉さんに説明するも、渉さんはそれを撥(ハ)ねつける。 「菊森が出席するのは構わない。だが、俺の秘書はコイツだ。」
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