爪痕(ツメアト)-1

32/39
3056人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「…社長、どちらへ?」 「黙ってついてこい。」 「…はい。」 …渉さん、結構本気で怒ってるのかもしれない。 確かに、会長が来られるとわかっていたのに…。 会長が出席されることで、嬉しくて、舞い上がってて、ちゃんとパーティー…渉さんのことまで気がまわってなかったのかもしれない。 …秘書…失格。 駐車場に着くと、渉さんは私を一度も振り返ることもなく、さっさと運転席に乗ってしまった。 私は小さなため息をついてから急いで助手席に乗り込んでシートベルトを締めた。 会話のない車内。 その中で私の心を埋め尽くすのは 『…秘書失格…。』 これは、予想以上にこたえていた…。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!