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「着いたぞ。」
目的地には10分程度で着いてしまった。
停めたのはコインパーキング。
そこから渉さんの後を黙ってついていく。
渉さんが入ったのは一軒の高級ブティックだった。
「あ、あの、社長…。」
渉さんに呼びかけるも、完全無視。
渉さんは革靴を鳴らしてずんずん奥に進んで行く。
この場所に足を踏み入れるのさえ戸惑うような高級感の漂う空間を、渉さんの影に隠れるように進んだ。
奥まで行くと、一人の中年女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。待ってたわよ。…この子ね?」
「ああ。」
渉さんがそっけない返事を彼女にした後、その女性が微笑みながら私をじっと見つめてきた。
そんなはずなどないのに、彼女の微笑みには見覚えがあるような気がしてしまった。
「…何が、中(チュウ)よ!? 渉の見立ては当てにならないわね。」
…渉…。
…渉!?
自然過ぎて聞き流すところだった。
彼女は渉さんを呼び捨てにした。
「…あの…。」
私が遠慮がちに口を開くと、彼女はさっきよりもっと深く優しく笑った。
「私は遠野 千草(チグサ)。渉の伯母なの。つまり、渉の父の姉。よろしくね。」
…伯母さん!?
…あ、どうりでどこかで見たことあるはず…。
彼女は遠野会長と優しい目つきがよく似ていた。
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