爪痕(ツメアト)-1

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「私…これよりもっと地味なスーツとか…。」 アイツは相変わらずだった。 自分の恰好がよっぽど落ち着かないのだろう。 すると、伯母がアイツを落ち着けるようにゆっくりと言った。 「ノアちゃん。あなたの言う通り、本来なら秘書は地味にして社長のサポート役に徹するのかもしれない。…でもね、明日のパーティーは特別なの。 …身内でこんな風にいうのもおかしいんだけど、遠野隆弘は最高の社長だったわ。仕事も出来て、人望も厚く、彼の功績は大きいわ。実際、彼の社長留任を望む声も多いの。でも、それは渉にとっては大きな重圧ね。 だから、明日は渉に任せても大丈夫って、みんなに知ってもらいたいの。そのためにはまず、渉に注目が集まらなきゃならない。 ねえ、明日はグループも取引先も男性ばかり。あなただったらスーツ姿でも十分視線を集められると思うけど、渉のために一肌脱いでくれないかな。…もう脱がせちゃったけど。」
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