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振り向いた拍子に細いヒールの先が床の絨毯(ジュウタン)に取られ、一歩踏み出そうとしたその瞬間によろめいてしまった。
「…キャ。」
私の声が漏れたのと、誰かの腕が伸びてきたのがほとんど同時だった。
私は力強い腕に全体重を預けていた。
「大丈夫か?」
…室長だった。
顔を上げると室長の顔が今までにない至近距離にあって視線が合わない。
一瞬にして耳まで熱くなった。
「…あ、…わ、あの、すみません。」
室長の腕から離れようとするのに足元がおぼつかなくて思うようにいかない。
…顔が燃えるように熱を帯びて、体には変な汗が滲んだ。
室長の力強い腕と広い胸に…
…初めて……室長に男性を感じた。
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