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アイツは再び顔を赤くした。
顔を赤く染めたのは恥ずかしさ…というより、怒りだったのかもしれない。
目を伏せて、ドレスの裾を握りしめる手が震えているのを見てハッとしたが…遅かった。
「…申し訳ありませんでした。化粧直しに…行ってきます。」
アイツは俯いたままその場を離れた。
「桐谷くん!」
菊森が呼びとめたが、アイツは振り返らなかった。
菊森が俺との距離を詰めて真正面から俺を睨みつける。
「社長、場所をわきまえて下さい。」
そしてさらに鋭い視線でこう付け足した。
「…彼女の笑顔なしで今日が上手くいくとでも? …社長にとっても、彼女にとってもこれは仕事です。仕事に私情を持ち込むのはやめて下さい。」
菊森はそう言って、アイツを追って会場を出ていった。
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