爪痕(ツメアト)-2

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化粧室を出ると、広いフロアに続く通路で室長が待っていた。 私は室長を見て笑みがこぼれた。 だって…室長の方が私よりよっぽど悲しい顔してるんだもん。 「…すみません。室長がそんな顔することないでしょう?」 私は笑顔で言った。 でも、室長は笑わなかった。 「…大丈夫か? 無理して笑うのは辛いだろう。今からは君が会長のそばにいるんだ。社長には私が付くから。」 「…そんな、私、大丈夫です。」 「無理しなくていいんだ。」 「…大丈夫です。すみません。仕事はやります。社長秘書。それが私の仕事ですから。それが出来ないのに会長のそばには立てません。」 室長は小さく息を吐いた。 「…わかった。無理ならすぐに言いなさい。」 「わかりました。」 私と室長は並んで歩きだした。 室長は私の歩調に合わせて速度を落としているのがわかる。 室長の優しさに思わず本音がこぼれた。 「…いっそのこと、…早くなくしてしまいたい。」
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