2769人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
化粧室を出ると、広いフロアに続く通路で室長が待っていた。
私は室長を見て笑みがこぼれた。
だって…室長の方が私よりよっぽど悲しい顔してるんだもん。
「…すみません。室長がそんな顔することないでしょう?」
私は笑顔で言った。
でも、室長は笑わなかった。
「…大丈夫か? 無理して笑うのは辛いだろう。今からは君が会長のそばにいるんだ。社長には私が付くから。」
「…そんな、私、大丈夫です。」
「無理しなくていいんだ。」
「…大丈夫です。すみません。仕事はやります。社長秘書。それが私の仕事ですから。それが出来ないのに会長のそばには立てません。」
室長は小さく息を吐いた。
「…わかった。無理ならすぐに言いなさい。」
「わかりました。」
私と室長は並んで歩きだした。
室長は私の歩調に合わせて速度を落としているのがわかる。
室長の優しさに思わず本音がこぼれた。
「…いっそのこと、…早くなくしてしまいたい。」
最初のコメントを投稿しよう!