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アイツのいない間にも俺には挨拶の列が途切れず、俺は愛想笑いでそれに応えていた。
さっきまでは自分でも役者だと思うほど上手く笑えてたのに、今はわずかに頬が引きつる。
相手の言葉に耳を傾けながらも俺はアイツが出ていった会場の入り口ばかりを気にしていた。
話の長いどこぞのオヤジに捕まっていた時だった、俺の背後に気配を感じた。
…アイツが戻ってきた。
その瞬間、長話をすぐに切り上げて俺の前のオヤジがアイツに大股で一歩近づいた。
「やあ、初めまして」と、また長い挨拶をアイツにしながら口元から荒い息を吐き出していた。
俺は心の中で舌打ちしながら、次の相手に挨拶を始める。
アイツは変態オヤジに今までと変わらない笑顔を向けて、にぎわっているビュッフェテーブルに奴を案内していた。
テーブルに着くまで、変態オヤジはアイツに体を寄せて歩き、今にもその腰元を引き寄せそうだった。
…やめろ。
気持ちと、言葉と表情が、バラバラになりそうだった。
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