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「「ふぅ~。セーフ~。」」
2人は教室にはいってすぐ、安堵の溜め息を漏らした。2人の通う高校は地元なので中学時代の同級生が多いとあって教室はにぎやかだった。その中に1人ぽつんと座席に座って本を読んでいる綾香を見つけた法花は綾香に話しかけた。
「あやちゃん、おはよ!」
綾香は法花に気づいて顔をあげた。
「ん?法花か。おはよう。」
「今日はなんの本読んでるの?」
法花は綾香の本を覗きこんだ。「ああこれか。これは最近の政治について述べられた本だ。」「うわぁ~。そんな本読んだらあたし、頭バクハツしちゃうよ…。」
綾香はフッと笑ってさらに話を続けた。
「そりゃあ、ニュースでさえ見ない法花にとっちゃあこんな本、わけわからんだろうな。」
「そ、それは言わないでよ~。」
2人はアハハと笑いあった。
§
チャイムがなり、入学式が始まった。入学式が行われた体育館は昨年建て替えられただけあってとてもキレイだった。
「次は生徒会長の挨拶です。」司会をしている上級生が言った。すると、いかにも真面目そうな眼鏡の似合う青年が舞台に上がった。
「本日は天候にも恵まれ――。」
そのとき、生徒会長と目があってギロリとにらまれた。法花はまるで怖いものを見つけたときのようにゾッとした。生徒会長はスッと目をそらすと、何事もなかったかのように話を続けた。
「――高校生活を存分に楽しんでください。生徒会長、小野田悠。」
周りの女子がざわめく。
「生徒会長って素敵な方ね…!私惚れちゃいそう////」
「私も!あの大人っぽさが上級生ってカンジですごく素敵…////」
そんな女子の中で1人、法花だけはおびえていた。
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