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「社長…気分はもうよろしいんですか?」
菊森の言葉がやけに他人行儀に聞こえる。
「ああ。悪かった。」
「…では、下のカフェで朝食にしましょう。…私もまだ食べていませんので。」
「…わかった。」
「桐谷くんも着替えて来るといい。まだ着替えを預けたままになってるんじゃないか?」
「あ、はい。着替えて下に向かいます。」
アイツがドレッサーの上の荷物をまとめて慌てて出ていこうとすると、またしてもアイツの体が前のめりに倒れそうになる。
俺は慌てて一歩踏み出したが、菊森の方が早かった。
アイツを正面からしっかりと抱きかかえた。
「…す、すみません。何度も……。」
しどろもどろな口調でそういうアイツの顔は真っ赤だった。
…なんだよそれ。
アイツは菊森から体を離して、赤くした顔のまま部屋を出ていった。
…なんだよそれ。
俺の中の何かの感情…
いや、そんな風に誤魔化したって意味はない。
これは久しぶりに感じる……
……嫉妬だった。
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