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俺の思考を遮るように言葉を発したのは隣にいた三原課長だった。
「…ホントに仕事かどうかはわかりませんけどね。」
彼が言うと、他の二人も「職権乱用だな、あれは。」とうっすら笑った。
「口を慎(ツツシ)んだ方がいいですよ。社長はそのような方ではありません。では、お疲れ様でした。」
ちょうどエレベーターが着いたので彼らはバツが悪そうにいそいそと乗り込んで消えた。
彼らには冷静に対処したつもりだが、俺は焦っていた。
携帯を取り出してまず彼女に電話をすると、コール音はせずにアナウンスが流れた。
…電波がないか、電源が入っていない…
こんなことは初めてのことだった。
携帯を握る手に汗が滲(ニジ)む。
慌てて渉に掛け直す。
始まったコール音にほんの少しだけホッとして息を吐き出した。
しかし……
そのコール音は聞けども聞けども途切れることはなかった。
耳に響く機械的なコール音が
俺に嫌な予感しか与えなかった―――。
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