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◆◆ side 渉 ◆◆
脳がわずかに覚めて薄目を開ける。
半分までも開かない目に朝の明りがじわじわと入りこむ。
その眩しさに何度も瞬きしながら目を慣らしている間に、俺の嗅覚が先に目覚めて何かに反応する。
いつの間にか俺に掛けられた布団からかすかにいい匂いが香っていた。
隣のベッドにアイツはいない。
視線だけで探すとアイツは窓辺に立っていた。
朝の景色を背景に、アイツのシルエットが浮かんでいる。
横になったまま肘をついてアイツの影を黙って見ていると、突如、その影が動いて、アイツが振り返った。
「…あ、社長。おはようございます。」
付き合ってるわけでもない男と二人で一夜を過ごしてのその反応に、一瞬言葉が出なかった。
今この瞬間、アイツよりも俺の方がパニクってるんじゃないかって、それを悟られないように平静を装う。
「ああ。」
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