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ずっと停車したままの車内。
事故の直後、一度動き出したと思った車は、数十メートル進んだだけで、再び停車し、それきりだった。
車のシートに縛り付けられた俺たちは離れることも出来ずにもう一時間になろうとしていた。
コイツとは何をどう話していたのかわからねえが、なんだか時間はあっという間だった。
そういえば…
危機的な状況を一緒に過ごすと親密になるとか…そんな何かなかったか?
…親密に…
そう思った時だった。
「あ!!」
隣のアイツが声をあげた。
「社長! 動き出しましたよ!」
前方を見ると車がわずかずつだが動き出したようだ。
「やっと、ホントの解除か?」
のろのろ動き出した先の車に続いてしばらくぶりのアクセルを踏んだ。
「良かったですね、社長。」
隣からの言葉にいいんだか…悪いんだか…と思いながら
そう言ったコイツの笑顔を見るとやっぱり良かったのかと思い直す。
時間がこんなにも惜しいと思ったのは…初めてだった。
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