2784人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「…渉さん。よかった…。よかった。…うう。ホントに良かった…。」
俺は半袖シャツ一枚。
アイツも半袖ブラウス一枚。
俺の背中に回された腕と、押し当てられた胸からアイツの体温が染みてくる。
棒立ちになったままの俺は自分の腕をアイツの背中にまわすことが出来ずにいた。
背中に腕を回して、アイツを自分のカラダの中に入れてしまえば止めることが出来なくなりそうだった。
そのうちにアイツの様子がおかしくなってきた。
「わたるさ…ん。よかったぁ…。」
「…よか…。」
俺の背中にあった腕の力が徐々に抜けて、俺の胸にもたれてそのまま全体重を預けてくる。
「…おい。」
顔を覗きこむと、目が閉じかけてカラダが揺れていた。
「…ったく。」
俺はアイツを支えて、そのまま車の助手席に座らせた。
少しシートを倒してやると、安心したように大きく息を吐いて、眉を下げている。
運転席に乗り込んであらためて隣をアイツを見つめる。
「…人の気も知らねえで。」
俺の方はデカイため息を吐いた。
「今日という今日は許さねえ…。」
俺はハンドルを握って、そのまま自分の家へ車を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!