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ああ…またこの苦手な笑顔。
そう思った時にはもう目をそらしてしまっていて、ハッとする。
別の部署とはいえ、上司に対してこんなにあからさまに……。
「あの、私の酔ったところなんて全く面白くないですし、可愛げもないですよ。酔ったらろれつも回らないし、フラフラするし、おまけに眠くなるし、それを越えたら記憶がなくなります。だから、その、お見せできるものじゃないんです。」
取り繕おうとすると、言い訳するみたいに早口になった。
…私…もう、酔い始めてるかもしれない…。
「…ふーん。それはぜひ見てみたいね。」
課長は口角をゆっくり上げて笑顔をつくった。
だから、その笑顔が……。
「桐谷くん、次、何飲む?」
「私…ホントにあまり強くないですから…。」
「せっかくの食事なんだし、ほら、他の二人も楽しそうじゃん。だから、桐谷くんもたまには羽目を外しなよ。」
そう言って課長は飲み物のメニューを私に差し出した。
一杯目のりんごサワーもまだ少し残っているし、もう少し…カラダが熱い。
察してください、と視線を送るがあっさりはねのけられ、仕方なくカルーアミルクを注文した。
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