第6話

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 茂は、前の部屋の私と同じように鉄の柱に磔にされていた。 だがちょっと違っていたのは、私の時は十字だったが、茂の柱はカタカナのキの文字と丁度似ていた。 体は大の字に固定されている。一杯に広げた左右の手首と、開いている足首、腹、私の時と同様、鉄の輪で身動きできない状態にされている。 茂は苦しそうに脇腹を、微妙にねじっているが、効き目はなさそうだった。 「茂、待ってくれ! 側にいる久実のほうが先だ!」 陸也は手首の輪を外そうとしているが、冷や汗が滲むばかりで、びくともしない様子だった。 「そんなことを言うなよ! 久実ちゃんが好きだからだろっ! 早くしろよ!」 今度の部屋は舞台と椅子、その間には防音ガラスの隔たりのようなものはなく、声が筒抜けだった。
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