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「やめて! 冬馬はそんな男じゃない! 浮気なんてしていないわ!」
現実という映像が脳裏に流れ、それを精一杯押し出した。冬馬との楽しい記憶だけを残したい。その想いがあるのに、涙が一筋こぼれた。
「またお前は真実から逃げるのか? しっかりと現実を、その目で見据え、あやつに罰を与えるが良い。このテープを止めたいか?」
「止めたいわよ! 当たり前じゃない! 馬鹿じゃないの!」
「落ち着け……冷静になるんだ久実。良寛さんの言いなりになっては思う壺だ――ん、なんだこのボタンは?」
陸也は、そっと私の涙を拭き、指先へと目線を移した。
「陸也とやらは気付いたか。久実の両手の指先には、三つづつのボタンがあるだろう? それで、このテープは止められる」
指を伸ばせば、押せる場所。丸い赤いボタンが左右に確かにあった。動揺して気付かず、視野に入り込まなかった。
「押すわよ! 当たり前じゃない! 簡単なことよ!」
「待て、久実!」
陸也の声が届く前に左の人差し指で、端のボタンを押した。すると金属のバーから矢が飛び出した。先がとっても鋭い刃。それが見事、茂の左の手の平に命中させた。
「ぎゃああああああ!!!! 痛い!!!!」
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