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「くくくっ……おっと、これも言い忘れていたなぁ――それは罪人に罰を与えるボタンでもある。思う存分使いたまえ」
茂の左手が真っ赤に染まってる。矢尻からは血の涙が垂れていた。
もう一度、自分の指先に目線を落とす。
――この震えている指、この指が人を傷つけた?
「さぁ、次のテープだ。直子の家にも盗聴器は仕掛けられていた……こいつの俗悪ぶりには笑えるよなぁ――?
なぁ久実。こいつを本当に助けたいと思うのか? 犯罪者だとは思わぬか?」
「久実ちゃん! そいつの話は聞かないで……僕は本当に久実ちゃんの事――うっ」
茂は辛そうだった。私に向かって切なげな瞳をし、懇願するように訴え、胃液を吐いた。
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