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暗闇の中、洋服の擦れる音だけが微かに聞こえた。茂が近くで動いている、そんな気配の物音だった。
「茂……側にいる? 顔も見えないね……ねぇ、この部屋壁が黒かったよね」
「壁? 気付かなかったけど、こんなに真っ暗じゃそうかもね。久実ちゃん、手を繋ごう。何も見えず別々になったら大変だ」
「……そうね」
鼓膜に神経が集中する。宙で何かが動いてる気配だけは感じ取ることができた。
「みーつけた。久実ちゃんの手」
ギュッと握られた手が、もぞもぞと空気を揺らし、茂の心臓にそっと手を動かされた。
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