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「別に。どこか行きたいか?」
「え。え…と…。…どうしましょ。」
「なら適当でいいだろ。」
「あ!!!…そういえば…社長、あ…、わ、渉さん、ドライブが趣味って言ってましたよね? じゃあ、これも…ドライブですか?」
俺が以前、何かで漏らしたその一言を覚えていてくれたようだった。
そのことが妙に俺の心をくすぐる。
俺は何も答えず…答えられずに、まっすぐ前を向いたままハンドルを持つ手にわずかに力が入った。
それならいっそ、遠出でもしようと思っていたその時、アイツが慌て出す。
…今度は何だ?
「渉さん!」
「なんだ。」
「ドライブですよね?」
「そうだ。」
「ドライブにはおやつですよ! おやつ。飲み物も必要ですよね? とりあえず、コンビニ行きましょう! コンビニ!」
…俺の場合、ドライブにおやつはいらねえが、
隣で笑うアイツの顔が、思いがけず、あまりに無邪気な笑顔で、俺は自分もつられて笑っていることにも気づかず言われるままにコンビニに向かった。
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