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ロビーに行き、受付に座る森本さんに会釈をすると、彼女が視線で彼の居場所を示してくれた。
辺りを見回したがすぐには見つけられず、もう一度彼女に確認しようと身体の向きを変えようとすると、一人の男性が座ったままで私に手をあげた。
「やあ。ノアちゃん。」
声を掛けてきた人物はあの時の“彼”に間違いないけれど、あの時とは随分雰囲気が違っていた。
シャツにネクタイ、きれいなパンツ。
どこからどう見てもビジネスマンだった。
あの時は学生のような印象さえ受けたのに。
「こんにちは。あの…先日は大変申し訳ありませんでした…。連絡もせずに…。」
「ほーんと、連絡くれないからここに来るしかなかったじゃん。」
彼はそう言って一枚のメモ紙を顔の前でひらひらと揺らした。
よく見ると、それはあの日私が携帯番号を書いたメモだった。
「ノアちゃん、君、この電話番号どこか間違ってるよ。何度かけても君に繋がらないもん。」
「え?」
私はその小さな紙を受け取って、番号を確認した。
『 090-XXXX-XX2X 』
…あ。
ここ2じゃない!
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