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「すみません! 本当に間違ってたみたいです。本当にごめんなさい。」
「あはは。いいよ、もう。それにそのおかげで君に会えたし。」
「…よくここがわかりましたね。」
「これだよ。」
彼は今度は別の紙を掲(カカ)げた。
「あの社長さんがくれた名刺。…もらっとくもんだね。」
…あ。
そういえば、あの時、渉さんは名刺を渡していた。
それで、ここがわかったのは…理解できたのだけれど…
…どうして、ここに来たのだろう?
私の頭の中に浮かぶハテナマークを読みとったのか、彼が切り出した。
「今日はさ…。あ、とりあえず座りなよ。」
「…はい。」
ロビーの商談スペースで、彼の向かい側に私は腰を下ろした。
すると、彼は渉さんの名刺と番号のメモを胸ポケットに仕舞い、それと引き換えに自分の名刺を取り出した。
「はい、これ。俺の名刺。」
「…失礼します。」
私は彼の名刺を胸の位置で確認した。
…え。
声が漏れそうになるのを何とか抑えた。
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