刺客 2

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彼の名刺には会社名や連絡先。 電話にFAX、メールアドレス。 名刺なんだから当たり前。 ただ…私が声を漏らしそうになったのは、彼の肩書き。 【 W社 専務取締役 山崎 恭介 】 …せ、専務!? しかも、業界は違うけれど、W社と言えばかなりの大手だ。 …学生にさえ見えた彼が…専務取締役。 名刺を見ながらまばたきの回数が妙に増える私に彼は笑った。 「…いいなあ。その素直な反応。何でこいつが専務なんだって顔してる。」 「そ、そんなことありません!」 「いいよ。別に。みんなそう思ってるし。俺、お飾りの専務だから。」 何て言ったらいいのかわからなかった。 「あはは。そんな顔しなくていいよ。そういえば、あの社長さんもずいぶん若かったよね? 彼も俺と同類かな。どうせ、2世でしょ? 親父さんが会長かなんかで実権ふるってんだ? 辛いよなあ。どこでも2世は。責任のある仕事なんてこれっぽっちも任せてくれないし。」 彼は一人でペラペラとしゃべり続けた。
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