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彼の名刺には会社名や連絡先。
電話にFAX、メールアドレス。
名刺なんだから当たり前。
ただ…私が声を漏らしそうになったのは、彼の肩書き。
【 W社 専務取締役 山崎 恭介 】
…せ、専務!?
しかも、業界は違うけれど、W社と言えばかなりの大手だ。
…学生にさえ見えた彼が…専務取締役。
名刺を見ながらまばたきの回数が妙に増える私に彼は笑った。
「…いいなあ。その素直な反応。何でこいつが専務なんだって顔してる。」
「そ、そんなことありません!」
「いいよ。別に。みんなそう思ってるし。俺、お飾りの専務だから。」
何て言ったらいいのかわからなかった。
「あはは。そんな顔しなくていいよ。そういえば、あの社長さんもずいぶん若かったよね? 彼も俺と同類かな。どうせ、2世でしょ? 親父さんが会長かなんかで実権ふるってんだ? 辛いよなあ。どこでも2世は。責任のある仕事なんてこれっぽっちも任せてくれないし。」
彼は一人でペラペラとしゃべり続けた。
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