刺客 2

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「いい感じです…よ。」 顔を上げたら渉さんの視線がすぐ間近でぶつかり、一度引いたはずの顔の温度が急上昇する。 「…だから、いちいちその顔やめろ。ここじゃなかったら今頃ムチャクチャになってるぞ。」 「…ムチャ…クチャ?」 「そうだ。ムチャクチャにめちゃくちゃにする。」 「…?」 「…今、頭ん中にハテナ浮かべただろ?」 「いえ。」 「嘘つけ。お前とバカやってても楽しいが、予定が詰まってる。これからK社に行って理事と会ってくる。明日はまた例の視察だ。今日出来ることは早めにやっておけ。」 「はい。」と、私は背筋を伸ばして返事をした。 …危ない。 なんだか心地よい雰囲気に思わず『渉さん』て呼んじゃってたし。 仕事。仕事。 私は渉さんの汚れたシャツとネクタイを手にして、渉さんと一緒に部屋を出て、エレベーターまで見送った。 その後シャツを水洗いしてから仕舞い、帰りにクリーニングに出そうと決めて仕事を再開させた。
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