2635人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「いい感じです…よ。」
顔を上げたら渉さんの視線がすぐ間近でぶつかり、一度引いたはずの顔の温度が急上昇する。
「…だから、いちいちその顔やめろ。ここじゃなかったら今頃ムチャクチャになってるぞ。」
「…ムチャ…クチャ?」
「そうだ。ムチャクチャにめちゃくちゃにする。」
「…?」
「…今、頭ん中にハテナ浮かべただろ?」
「いえ。」
「嘘つけ。お前とバカやってても楽しいが、予定が詰まってる。これからK社に行って理事と会ってくる。明日はまた例の視察だ。今日出来ることは早めにやっておけ。」
「はい。」と、私は背筋を伸ばして返事をした。
…危ない。
なんだか心地よい雰囲気に思わず『渉さん』て呼んじゃってたし。
仕事。仕事。
私は渉さんの汚れたシャツとネクタイを手にして、渉さんと一緒に部屋を出て、エレベーターまで見送った。
その後シャツを水洗いしてから仕舞い、帰りにクリーニングに出そうと決めて仕事を再開させた。
最初のコメントを投稿しよう!