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応接室のお茶をお出ししてやっと秘書室に戻った。
「ご苦労さん。」
「お疲れさま。」
「お疲れさん。」
室長と理央と奈美の声が同時に向けられた。
「営業では社長が上手くまとめたみたいだね。」
「はい。そばで見てたんですが、すごく…頼もしかったです。…会長に、お知らせしたいくらいです。」
「…そうか。」
「…はい。あ、そうだ、あれやらなくちゃ。」
今日はいろんなことがあって、妙にバタバタしている。
仕事に漏れがないようにちゃんと確認しておいた方がいいかもしれない。
私はやっと落ち着いて自分の席に腰を下ろした。
デスクでの作業をわずかな時間で手早くこなしていると、携帯の内線が鳴る。
相手は渉さんなのでお客様が帰られるところだろう。
私は席を立ちながら電話を受けた。
電話の内容は予想通りで、私は今野会長を下までお送りした。
その後は応接室の片付けと、先に戻った渉さんにコーヒーを入れる。
…少し濃い目で…
…ミルクを少し…
コーヒーもミルクもいつも通りの配分で。
そこにいつも以上の“お疲れさま”を込めて。
入れたコーヒーの匂いが給湯室いっぱいに広がる。
渉さん…
…待ってるかな。
なんて。
…なんか、私……。
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